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実録・富士登山タイトル

生まれて初めての富士登山

富士山遠望

頭を雲の上に出し 四方の山を見下ろして 雷様を下に聞く 富士は日本一の山
(登らなかった人にはこの歌の持つ感慨が分からない?)

Part  準備から8合目まで

 Part2 9合目から下山まで


はじめに

「富士山は見るもので登るもんじゃない」?

 ・・・1998年7月7日 、七夕の夜、今年50歳になる私たち夫婦は生まれて初めて富士山に登りました。このページはその体験に基づいて書いたものです。

 東京に生まれ育った私は多くの関東人と同じように「富士山は見るもので登るもんじゃない」などとずっと決め込んでいました。とはいえ、15年前から山中湖でペンションを営む私たちは、今まで沢山の富士登山のお客さんを迎えてきました。そして何人もの人が疲れ切って、2度と登りたくないというのを聞きました。でも、ふと思い立って実際に登ってみて、今私たちは、富士登山がすばらしいということを是非皆さんに伝えたいと思いました。
 なんと言っても日本一の山です。
富士山を見る度、「あぁ、あの雲の上の頂上まで行って来たんだ」という満足感が胸をいっぱいにします。遠くで見ていただけでは分からないその感動を皆さんにも味わって欲しいと心から思います。何が良いって、北岳だの槍ヶ岳、マッターホルンだって、難しい山で良い山かもしれないけど、そんじょそこらから見える訳じゃないし、その良さを知っている人は少ない。ところが富士山は日本のあっちこっちから見えるし、絵にも写真にもなっている世界の名山です。いつでもどこでも思い出しては感激が湧いてくるし、自慢もできる、こんな山そうそうはありません。苦労対効果といいましょうか、効率がよいのです。生涯の得になると思います。

 たった1度それもヨレヨレで登っただけなのに、案内を書こうといえば、経験豊富な登山家や富士登山のベテランを差し置いて何を言っているかと笑われるかもしれませんが、だからこそ、おっかなびっくりへっぴり腰の素人の富士登山のすべてを書いて、これから登ろうとする方の少しでも参考になればと思います。

 一生のうちにそうはない経験、つらくても楽しい思い出を残しましょう。「2度と登りたくない」と言って欲しくありません。だからタイトルは「後悔しない富士登山」


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登る前

 「富士山に登るぞ」と決めた時から、決めたのは良いけど分からないことだらけ。特に私のように、学生時代にはあちこちハイキングを楽しんではいたが、もうこの10年以上車ばかりの生活で足腰が弱ってきた人間には不安がいっぱい。最近山歩きなんて全然していない。いきなり3000m以上の山は無謀だという気もするが、3000mのなんたるかを知らないから、「時間がかかるんだろう」位の考えしかない。そうだ、間違ってはいないが、どうして時間がかかるかが分かっていない!

 富士山は、色んな意味でそれまでの日常生活と隔絶した想像を絶する世界なのだ。(と書くと、すごいぞって気がする。ちょっぴり自慢)

 どうせ登るなら、地元に住んでいるのだし、天気の良いときに登りたい。天気が悪くて何も見えなかったら意味がない。3週間ほど前から、7/6〜8を休みとして、本命を7/7の夜と決めた。前の日から同行する雑誌カメラマンのO氏も泊まり込みで準備に入った。

 徹夜で富士山に登ろうというのだから、昼間に仮眠を取った方がよいといわれた。昼間仮眠を取るには前の晩に遅くまで起きていた方がよいと考えるのは理屈だ。2年前に行ったロサンジェルスと同じ時差だと思えば、こりゃ大変だとわかる。運良く?ワールドカップの放送を夜やっているからそれを見て3時くらいまで起きていた(これが間違いだった)。7/7 満を持して仮眠を取ろうと思ったが、色々準備を泥縄でやっているせいか、結局眠れないまませいぜい2時間くらい横になっただけであった。3時間おきに天気予報を聞く。雨の確率10%、曇りのち晴れという。しかし、富士山は雲に包まれたままだ。半信半疑で、ともかく、準備をして、一緒に登ってくれることになっている富士登山のベテラン河口湖の「ペンションあみ」の西島さんのところに、夕食後集合。天気ははっきりしないが、ともかく5合目まで行ってみようと言うことになる。

 5合目まであみさんの車でいく。5合目は雲の上だ。富士山もはっきり見える。夜の5合目は初めてだ。静まり返って空気もひんやりとして、何か特別なことが始まる緊張感が漂う。「グリンデルワルトみたい(行ったことないけど夜景の写真を見たことがある)」といったら、O氏が「ホントですか?」と半ば馬鹿にしたように言う。どっちにしろ夜で暗くてよく見えないから、それなりにロマンチックだ。トイレに行き、懐中電灯などの装備を確認。カルフォルニアからきたという外国人グループがいた。大きな懐中電灯を持っているので、自慢のヘッドランプを見せると、感心していた。

登山記-1- ・・・こんなものかと7合目

満月と山小屋の明かり

 午後10:00 5合目(標高2305m)をスタートして、しばらくはゆっくりとした下り道(下山の最後は登り道!)、初めての富士登山というすがすがしい緊張感を感じながら、るんるん気分。やがてあっという間に6合目。くっきりと富士の山に山小屋の明かりが浮かび上がり、まるで舞台を見ているよう。6合目にあった山小屋は火事でなくなっている。さていよいよだ。比較的広いジグザグ道をゆっくりと登っていく。(しかし足下は良くない。岩場を除いて山頂まで、下は土ではなく砂礫と溶岩だ。足が踏ん張れない、ずるずると滑る。これが結構ストレスだ)月がでて山小屋の明かりも美しい。月がなければ星が奇麗だと言うことだが、暗い道より月明かりが嬉しい。上を見てもいっこうに近づかないが、下を見るともうこんなに高いところに来たのかと嬉しくなる。

 ポイント5合目では車を降りてすぐに登らず、ゆっくりと空気になれるように過ごすことが高山病防止の第一歩。また後で知ったことだが、このジグザグ道は外側を登っていくのが正しい富士の登り方、つまり、歩数を多く勾配を緩やかにゆっくり登る。これがその道のプロの登り方。前に進むのではなく上に登っているのだという事を忘れないこと。急ぐべからず。

  

 午後11:30 7合目の山小屋に到着。2700mである。「頂上まで4時間20分」と書いてある。中にはいるとお金を取られるから外のベンチに腰をかけて休む。朝のうち天気が良くなかったせいか人が少なくゆっくり休める。ちなみに、うどん、ラーメン¥600、みそ汁、コーヒー¥300、ところてん¥400、おでん¥650カップヌードル¥500だ。ここから上の山小屋も外観は同じだから後は省略。この小屋の前のベンチはどこの小屋にもあってありがたい。が、大概このベンチの裏は絶壁である。ベンチのさびた背もたれが怖い。ここまで、殆ど普通の登山のように汗をかいたりしない、ゆっくりしか進めないのと気温が低いせいだろう。タオルを腰にぶら下げていたが使うことはなかった。汗をかくと休憩の時冷える。暑くてバテるということはない代わり、体に良いわけないから無理は出来ない。高山病になる人は、もうこの辺で頭が痛くなるらしい。寒くなってきたので、ウインドブレーカーを着る。

 ポイント高山病の症状とは、頭痛、耳鳴り、吐き気、眠気、脱力感、顔手足のむくみなど酸欠のために起こるものだ。気圧は高度約2300mの5合目で平地の3/4、3000m以上になると平地の1/3近くになるらしい?。ちなみに持っていたドロップの包装袋がパンパンに膨らんでいた。治療は下に降りることだけ。応急処置としては酸素補給。しかし、2度目に登るときは楽だというから、よくわからない。5合目から急がず少し時間をかけて体を慣らさせること、こういう登山記をみて事前にそういうもんかと知っておくだけでも楽になると思う。もし7合目で苦しいようなら下山した方がよいかもしれない。特に子供の場合、早めに高山病の症状が出るらしい。最初のうちは慣らす意味でも「歩幅を狭く」「すり足で」「ゆっくり」というのがコツらしい。慎重に様子を見ているうちに自分のペースをつかめる、そうなればしめたものだ。

  

休憩 小休止
岩場で休憩。
 みんなで休憩。未だ元気だ。

 ここからは岩場を登っていく。鎖があるが、これは広い岩場の中の登山コースを示しているもので、頼りにして支えにするものではないらしい。はいつくばるほどではないが、風の強い箇所もあり、手には何も持たない方が安心。杖はじゃまだが立ったまま休むときは便利。なるほど軍手が必要なわけだ。ヘッドランプが役に立つ。気温も低くなってきた。毛糸の帽子が欲しい。しかし、富士登山の写真にはこんなところ写っていない。富士登山はジグザグの道をずっと歩いて行くだけだと思っていたのに、この岩場の登りが結構長い。雨で濡れていたらちょっと大変なところだし、子供とかだったら危ないのではないかと心配。ハイキング気分で来るところじゃないと思う。

8合目に到着

 午前1:35 ついにずっと下から見えていた8合目の赤い鳥居に到着。この坂がきつい。3100m。「太子館」。この小屋ではコーヒーが¥400になっていた。後少しだと思ったら、山小屋の人が「時間的にはちょうどここで5合目から山頂までの半分。」との声。え〜〜〜〜〜ぇっ!?!!慌てて時計を見る。5合目をスタートして4時間を経過していた。頂上でのご来光はあきらめる。(焦らずマイペースで山頂を目指すことになり結果的にはこれが良かった。)

 ポイントこのスバルラインからの富士の東斜面を登るコースの良さは、山頂でなくてもどこでも御来光を仰げることだ。又、頂上は狭いから夏のシーズンでは、8〜9合目の山肌に背を当てて御来光を見るというほうがいいらしい。富士宮からの登山道だと、山頂に行かなければ「雲海の彼方の御来光」は仰げない。
 なお、
日の出の時刻
 7/1(4:30)、7/15(4:40)、8/1(4:50)、8/15(5:00)、8/31(5:15)


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登山記-2-・・・いつまでたっても8合目

 うわさには聞いていたが、8合目からが長い。これからが富士登山だ。8合目の赤い鳥居から山小屋がいくつか続く。「8合目」3100m、「本8合目」3200m、「8合5勺」3250m、・・・いつまでたっても8合目だ。マックのヴァージョンみたいだなと思う。

河口湖・富士吉田の町の灯りがきれい。

   

体が重い、岩の上で寝ても痛いと感じない、どうでも良い心境


「富士山ホテル」という山小屋で酸素休憩

 午前3:15 クルシイ思いをして、胸突き八丁と書かれた山小屋「富士山ホテル」に着く。3400m。風が強くさむい。外のベンチで座る気もしない、と思っていたら、小屋の人が出てきて寒いから中に入れ、お金は良いから休んで行けと招いてくれた。小屋の中には10人ほどの人が休んでいた。靴も脱いでくつろぐ。休むうちに気持ちが悪くなってくる。休むと具合が悪くなるのが不思議だ。歩き始めると直ってしまうが、すぐ息が苦しくなる。この繰り返しだ。ここで初めて持ってきた酸素を試してみる。眠気がすっと引いてすっきりするが、呼吸が楽になるほどではない。ずっと気分は悪いまま。「今日の御来光は4:30だが、東京方面に雲があるので今日は御来光は仰げない」と小屋の人が説明してくれた。具合が悪いから、御来光どころではない。
 ちなみに、カレーライスは¥1200、カップヌードルは¥600、水は¥400。酸素は¥1500、軍手は¥400、雨具は¥4000。

 山頂での御来光はみれなかったが、8合目の上の方で夜が明けてきた。しかし、景色を見る雰囲気ではない。まだ登るのか・・・とすっかり気持ちが引いている。どこで下山すればいいのかとそんなことが気になる。(イヤ、実際、ものの本には具合が悪いときは下山しましょうなんてのんきに書いてあるが、あの岩場を夜1人で降りるのか?嘘でしょう)
 疲れたと言うより気分が悪い、高山病だ。・・・というより寝不足なのに夕食にウナギを食べた後、コーヒーを立て続けに3杯も飲んだのがいけなかったみたいだ。自業自得。

 ガイドにはこの「冨士山ホテル」から山頂まで1.2km、実質1時間半と書いてある。嘘でしょう(ガイドに書いてあるのは、登り5時間ということからして殆ど嘘だと私は言いたい)。この通りなら5時には山頂に立っているはずだった。ところが・・・

下山を覚悟して、もうろうとした頭ながら、せめてもの記念にと必死に下界にカメラを向けた。
どこでどうやってとったか覚えていないが、綺麗な写真だ。山小屋の明かりと山中湖が美しい。

 ポイントスバルラインの5合目から登るこのコースは、登りと下りが別ルートである。8の字型になっていて右が登りで左が下り、8合目のくびれでルートがつながっている。だから、8合目(色々あるが「8合目」ならどこでも良い)でしか下山ルートに行けない。途中、コース以外のところは落石、滑落の危険があるので絶対にコースから外れてはいけない。